お線香と言えばたてるものと思いがちですが、浄土真宗では寝かせます。
寝かせる理由は、お線香が発明される前の「常香盤」というものの名残り。
でもお線香を寝かせると消えちゃうんじゃないかと心配になりますよね。
大丈夫!ちゃんと「寝かせようの灰」というのがあるんです。
今回は浄土真宗のお線香のあげ方について詳しく紹介していきます。
浄土真宗の線香のあげ方は何が正しい?
お線香をあげる方法を知っていますか?
たいていは1本か2本を手に取り火をつけて香炉に立てますよね。
でもこれって、本当に正式な方法なんでしょうか?
「正式な方法」というと、ちょっと引いてしまったりして。
自分がこれまでやってきたこと、本当は間違い?なんてことにもなりますよね(-_-;)
実は、本数も含めお線香の立て方は宗派によって微妙に異なります。
曹洞宗、臨済宗、日蓮宗は1本、天台宗、真言宗は3本、浄土宗は1本か2本を二つ折りにします。
供え方のマナーは、
- かるく一礼
- お線香をとってローソクの火から火をつける。
ローソクに火がついていない場合は、火をつけてください。 - お線香を持っている手とは反対の手であおいで火を消す
口で吹いて消してはいけません。 - お線香を香炉にたてる
上記の宗派はすべて同じ動作です。
しかし、浄土真宗では「寝線香」といって、立てるのではなく横に寝かせてお供えします。
方法としては次のような順番です。
- 1本のお線香を二つか三つに折る
寝かせるので、香炉の長さに合わせるようにします。 - 火をつけた後、逆の手で仰いで消す
- 火が左になるように香炉に寝かせる
と、こんな感じ。
他の宗派と全く異なるので、覚えておくと慌てることがありませんね。
さて、仏教においてお線香を供えるという行為自体はみな一緒です。
自分の体臭を消し、かぐわしくよい香りを届けることを「供香(ぐこう)」といいます。
また「香り」は辺り一面に満ちることから、仏様の慈悲に通じるといわれています。
この「香を焚く」という行為の起源は、仏教発祥の地インドで起こったといわれています。
仏教よりもさらに古く、香りそのものを楽しんだり医療目的にも行われていました。
暑いインドではたくさんの汗をかきますよね。
体臭を消すと同時に良い香りをまとい、浄化するという意味もあったそうです。
仏教が誕生したばかりの時、その信者の多くは肉体労働の社会的に虐げられた人たちばかりでした。
仕事の終わった後で仏様のありがたいお話を聞くにも、「お香を焚く」ことは必要なことだったのです。
香を出すためには香木を焚きますが、香木そのものが大変貴重なため、それを削り粉にして使うようになります。
この粉を「燃香」といい、「燃香」を固めて棒状にしたものを「線香」といいます。
「線香」の起源もやはりインドで、中国を経て日本へは室町時代に伝えられました。
当時は御公家さんたちの贈答用として用いられたということですから、いかに珍重されていたかが分かります。
国産の「線香」については様々な説がありますが、江戸時代の17世紀後半から18世紀初頭には作られようになり一般に普及していったということです。
線香は燃焼が一定で安定しているため、時計の代わりにも使われました。
浄土真宗で線香を寝かせる理由って?
浄土真宗でお線香を寝かせる理由は、お線香が発明される前の「常香盤」を使って香を焚いていた時の名残です。
「常香盤」は香炉の一種で、中国より伝えられ、現在でも使用されています。
長時間にわたって香を焚くのに便利で、灰に幾何学模様の溝を型押しして作り、そこに「抹香」を一本の棒状になるように敷き詰め、端から火をつけていきます。
「抹香」とは「燃香」の一種で細かく粉末にしたお香のことです。
真上から見ると迷路のような形ですね。
お線香が普及した今でも、浄土真宗ではこの風習が残りました。
お香が燃えながら幾何学文様の平面を移動する様を、お線香を用いて踏襲ということでしょうか。
線香を寝かせた理由を考えてみた!
外見の踏襲の他に、何か利便性の面でも「寝かせた方がいい!」と判断した理由を考えてみました。
ここからはあくまでも推論です。
1本のお線香を2本あるいは3本に折って使用するため、長く燃えているということはないのですが、香りが強く残るということはいえると思います。
他には?
お線香は燃焼が安定しているために時間を測ることにも使用され、曹洞宗や臨済宗では座禅の単位としたことは前述しました。
同様に、天台宗や真言宗でも儀式を重んじるという観点から、お線香を使って時間を測っているのではという説があります。
他方、「寝線香」はその香炉に合わせて折るので、正確な時間を測ることは難しいですね。
地域によっては「長香炉」というものがあり、折らずにそのまま寝かせることができますが、時間の経過は見にくいかと思います。
しかし元々の「常香盤」では、敷き詰める香りを変えたり鈴を鳴らすような仕組みで、ここからここまでで何分、という具合に時間を測ることを実際に行っているそうです。
お線香ではとてもできないとても優美な方法で、びっくりしてしまいますが、
とどのつまり、「寝線香」は利便性を追求したものではないということになります。
どうやら、浄土真宗では便利で優美な「常香盤」へのリスペクトも含めて、その方式だけを継承していったではないかと考えられます。
線香を寝かせると消える!そんな時どうすればいいの?
お線香を寝かせる理由は分かりましたが、しかしそれでは消えてしまうのではないかという不安が残りますよね。
灰に触れた瞬間すぐに消えてしまったという話を聞いたこともあります。
だからといってお線香を「寝かせる」なんておかしい!と結論付けるのは早とちりというもの。
香炉に前もって入れてある灰のことを「香炉灰」といいますが、お線香が消えてしまうのはその灰に原因があるからです。
「香炉灰」にはいくつか種類があり、「窯業灰」という白い石でできた真っ白な灰はすぐに火が消えてしまいます。
お線香を立てる方式では、倒れた時などすぐに消えるので安全なのですが、「寝線香」には不向きです。
そこで「わら灰」というものを用います。
「わら灰」はその名の通り、藁を燃やしてできた灰です。
わら灰はそのため通気性に優れ、お線香が燃え残るということがありません。
ただ外見上の見てくれで、「窯業灰」が真っ白でいかにも仏事にふさわしいのに対して、「わら灰」は灰色をしています。
仏具店などでたくさんある中から、それぞれの特性を知らずに見た目で選んでしまうと、「寝線香」では消えてしまいます。
「わら灰」は通販などで一般に売っているものよりもお高めですが、消えてしまってはお線香がもったいないですよね。
「香炉灰」には必ず「わら灰」を使用するようにしましょう。
まとめ
浄土真宗では「寝線香」といい、1本のお線香を香炉の大きさに合わせて2本あるいは3本に折り寝かせて供香するのがマナーです。
それは、お線香が発明される以前「常香盤」でお香を焚いていたころの方式を踏襲しているからです。
「寝かせる」というとお線香の不が消えてしまうのではないかと不安になりますが、「わら灰」という香炉灰を使用することで、火は消えることはありません。
「寝線香」は浄土真宗だけのマナーです。
知っていると慌てないで済みますね。
お線香のあげ方は宗派により、またその地方や地域によっても異なります。
中には、そのお寺の僧侶の方の考え方によっても違ってくるということもあります。
その場になって果たしてここはどの宗派でどういうマナー?となってしまうこともあるでしょう。
しかし、恥をかかないようにと周りの人に尋ねるようなことは、避けた方が良いということを聞きました。
マナーに従ってお線香をあげるのも大事ですが、肝心なのは供香する気持ちだということも一方で忘れてはならないと思います。
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